食用油「エコナ」が特定保健用食品(特保)から外れた。前から安全性を疑問視する意見があり、行政の対応が遅れたことは否めない。食品問題には消費者の側に立った迅速な取り組みが不可欠だ。
九月中旬に花王が販売自粛を発表してから、消費者庁の特保再審査決定、花王の特保許可取り下げまで一カ月足らず。あわただしく動いたエコナ問題だが、実は六年前から議論が続く懸案だった。
エコナは「脂肪がつきにくい」がうたい文句。一九九八年に特保の表示が認められた。消費者団体は、成分のジアシルグリセロール(DAG)が発がん促進作用を持つと主張して二〇〇三年と〇五年に特保取り消しを要求。今回は、それとは別のグリシドール脂肪酸エステルという物質が体内で発がん性のあるグリシドールになる恐れがあるとして問題になった。花王はどちらも健康には問題ないと主張する。
対応に時間がかかったのは、安全性の評価が白黒はっきりしないからだ。厚生労働省が「極端な条件では食塩さえ発がん促進作用があることになる」と指摘するように、食品の安全性を考える際には、その有用性と危険性をバランス良く考えるリスク評価が必要だ。評価に当たる食品安全委員会はDAGの調査を継続中。通常の手続きでは、これ以上の対応を進めることはできないことになる。
しかし、エコナについて多くの問題点が前から指摘されていたことを考えれば、もう少し対応を早めることができたはずだ。長期にわたって摂取される食品内の物質についてはリスク評価を進める一方で、「何かあってからでは遅い」との予防原則も働かせる必要があったのではないか。〇三年以来、消費者団体がエコナを問題視する中で、特保取り消しは無理としても再審査に踏み切る対応を取っていれば、今回のように消費者の不安を拡大させることはなかっただろう。
厚労省から特保の許可権限を移管された消費者庁の対応も当初、鈍かった。特保取り消しを求める消費者の声に対し「科学的なデータがそろってから考える」との説明を繰り返した。これに対し、消費者団体の代表や企業経営者、弁護士などでつくる消費者委員会は特保の取り消しか一時停止を求める見解を打ち出し、結果的に花王の許可取り下げにつながった。消費者庁はこれまでの官僚の常識を打ち破る消費者委員会の姿勢に学ぶべきだ。
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