HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 58184 Content-Type: text/html ETag: "3961b0-1612-ecec68c0" Expires: Fri, 16 Oct 2009 03:21:05 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 16 Oct 2009 03:21:05 GMT Connection: close 農家戸別補償 生産性向上につながる修正を : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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農家戸別補償 生産性向上につながる修正を(10月16日付・読売社説)

 これで衰退する日本の農業を再生できるのか。農林水産省が、稲作農家に対する戸別所得補償制度を、2010年度に始めることを決めた。

 11年度から制度を本格実施する予定だったが、コメについては1年前倒しする。農政の軸足は、生産調整(減反)による価格維持から、農家に対する直接支援に移ることになる。

 減反は水田総面積の4割に達しており、今後のコメの消費減を考えても、さらなる強化は難しい。一方、米国や欧州連合(EU)はすでに農家への直接支援を農業政策の基軸としている。今回の政策転換の方向は間違っていない。

 しかし、規模が小さい農家にまで手厚く支援すれば、かえって農業の体質強化が遅れかねない。補償対象を一定規模以上の農家に限るなど、生産性向上につながる制度とすべきだ。

 戸別所得補償は、農作物の販売価格が生産費を下回った場合に、その差額を補填(ほてん)する制度だ。コメでは140万戸の販売農家のうち、減反に参加する農家をすべて補償の対象とする方針だ。

 補償額は全国平均の販売価格と生産費で算出し、個々の農家の収支によらず一律に支給する。高く売れるコメを効率的に作った農家ほど所得が増える仕組みとし、大規模化などに取り組んだ場合は、加算金を出す計画もある。

 稲作を本業とする農家にやる気を起こさせる効果はあろう。だが、稲作の再生に必要なのは、他の作物より大きく遅れている規模の拡大と、新たな担い手の確保だ。

 欧州の農家は平均50ヘクタール前後の耕作地を持つのに対し、日本の稲作農家の6割は、作付面積0・5ヘクタール未満の零細農家だ。しかも、その担い手の大半は高齢者で、稲作は副業に過ぎない。

 こうした農家まで手厚く補償すれば、非効率な経営が温存され、農地の集約や若い農業経営者の登場を阻むことにもなる。

 やはり、支援農家の絞り込みが欠かせない。鳩山内閣は制度の見直しに踏み切るべきだろう。

 全国の稲作農家の補償には、3400億円が必要となる。コメの作柄などによって、費用がさらに膨らむ可能性もある。これをどう手当てするかも課題である。

 農業関係者の間には、戸別所得補償の導入が、世界貿易機関(WTO)などの交渉で、コメの市場開放に踏み切る布石ではないか、との不安が根強い。鳩山内閣は貿易自由化と日本農業の将来に向けた展望を示してほしい。

2009年10月16日01時39分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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