おお、こんなところに身を潜めて……。などとものの哀れを誘うのが羽田空港の国際線ターミナルだ。きらびやかな国内線ビルからしばしバスに揺られ、たどり着く先は小さな2階建ての屋舎。ひなびたローカル空港に来たようである。
▼ソウルや上海にチャーター便が飛んでいるからなかなか便利なのだが、往年のハネダの栄華は影もない。と思っていたら時代はまた大きく動き、ここを再び国際化してハブ(拠点)空港にする方針が急浮上してきた。新しい滑走路ができて使い勝手が一段とよくなる羽田を生かすのは理にかなった選択に違いない。
▼さりとて成田空港の立場もあろう。あの流血の反対運動を超え、ようやく開港した傷もうずくというものだ。前原誠司国土交通相は「両空港を一体的にとらえて合理的にすみ分ける」と説くけれど、実際にどう振り分けるかとなれば悶着(もんちゃく)は避けられまい。戦略を誤った空港行政の、これも厄介なツケというべきか。
▼羽田の国際線ビルが空港の片隅に身をやつしているのも、じつはあと1年ほどだ。来秋には新滑走路の完成に合わせ、モノレールの駅に直結した本格的なターミナルが誕生する。片や成田も新しい高速鉄道で都心と36分で結ばれるという。どちらが兄か弟かは分からないが、この双子をうまく並び立てる術(すべ)がいる。