日銀はコマーシャルペーパー(CP)と社債の買い取りを年末に打ち切るかどうかの判断を、次回以降の金融政策決定会合に持ち越した。いずれもリーマン・ショックのさなか、企業の資金繰りを助けるため導入した緊急措置。非常時対応の補助車をひとつ外す出口戦略には景気と企業金融への慎重な目配りが必要だ。
日銀をはじめ各国の中央銀行は原則として、国債など安全資産を担保に金融機関にお金を供給する。ところが昨年9月の米証券リーマン・ブラザーズ破綻で金融市場がマヒしたため、米連邦準備理事会(FRB)は危機対応策として、企業が発行するCPの買い取りを実施し、企業金融を直接支援した。
日本でも昨年末にかけ企業の資金繰りが厳しさを増したことから、日銀はCPと社債の買い取りに踏み切った。その後、世界的な金融危機が一段落したこともあって、大企業の資金繰り危機は一服した。
9月末時点の買い取り額は3兆円を上限とするCPが1000億円、1兆円が上限の社債は3000億円となっている。非常時対応としての意義が薄れたとして、期限とされる年末までで買い取りをやめるのは、ひとつの選択肢だ。
ただ非常時から平時対応への出口戦略に当たっては、入念な情勢の見極めが大切なのはいうまでもない。特に米国が事実上のゼロ金利政策を継続しているのをふまえ、日銀は誘導対象とする無担保コール翌日物金利をしばらく0.1%の低水準に据え置く必要があろう。
日銀はCPなどを担保に0.1%の金利で金融機関に資金を供給する「企業金融支援特別オペ」も実施中だ。その期限も年末だが、オペ残高は9月末で6.9兆円に達するだけに、CPや社債の買い取り中止とも併せ、企業金融に支障をきたさないよう配慮しなければならない。
大企業ばかりでなく、中小・零細企業の業況や資金繰りにも目配りは欠かせない。亀井静香郵政・金融担当相が唱える債務返済猶予策には問題が多いとはいえ、日銀企業短期経済観測調査(短観)をみても多くの中小企業が苦境に立たされているのは確かだ。その意味でも出口の判断は慎重にしてほしい。