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天声人語

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2009年10月15日(木)付

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 羽田から飛びたった定期航空の第一便には、中国・大連のカフェーに届けられるスズムシとマツムシ計6千匹がおさまっていた。人間のお客は一人もいない。出来たばかりの航空会社がやっと探した大事な「客」だった。1931(昭和6)年のことである▼時は流れて、いまや1年の利用者は6500万人にのぼる。世界でも4位というにぎわいだが、国際線はごく少ない。「国内は羽田、国際は成田」と棲(す)み分けてきたからだ。その原則をやめる、という前原国土交通相の発言が波紋を広げた▼発言は日本の表玄関をうたう成田には「格下げ通告」に聞こえる。流血の反対闘争の末に開いた空港である。苦渋の思いで受け入れてきた地元が、はしごを外される思いになるのは無理からぬことだ▼成田は66年に閣議で建設が決まった。民主主義にもとる寝耳に水の決定が、こじれにこじれる原因になった。いわゆる「ボタンのかけ違い」である。今回の大臣発言にも、またぞろ「寝耳に水」という憤りが聞こえていた▼きのうは千葉県の森田知事にねじこまれた。アジアの空を眺めれば「羽田を国際拠点に」という方針は理がある。だが「歴史認識」は甘かったのかもしれない。八ツ場(やんば)ダムといい、どうも就任以来の前原さん、連綿たるアナログである人の営みに、デジタル的に対処したがる傾きはないか▼秀才は2点間の最短距離を探すのがうまい。それが正しいとも限るまい。老婆心ながら、ときに定規を手放した方が、政治という「可能性の芸術」を描きやすいこともあろう。

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