HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Wed, 14 Oct 2009 03:17:17 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:高架橋がぐらぐら揺れ、激しく散る火花が夕闇を焦がした。五年…:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

2009年10月14日

 高架橋がぐらぐら揺れ、激しく散る火花が夕闇を焦がした。五年前の新潟県中越地震で、上越新幹線「とき325号」が脱線した現場近くで事故を目撃した人に取材した。「防音壁を破り落ちてくる」と恐怖に震えたそうだ▼「飛行機の翼が鉄柱をバリバリとなぎ倒していくような音だ」と生々しく語る乗客もいた。時速二百キロの脱線で「死傷者ゼロ」は奇跡的だった▼新橋−横浜を結ぶ日本初の鉄道が一八七二(明治五)年十月十四日に開業してから百三十七年。蒸気機関車から、時速二百七十キロ超の新幹線が列島を走る時代になった▼日本の鉄道が時刻に正確なのは国民性の反映とも言われるが、『時刻表2万キロ』などの著書がある故宮脇俊三さんの見方は違った。「線路が足りないから、列車ダイヤが過密になって時刻を正確にせざるを得ないわけで、朝のラッシュ時に三十秒到着が遅れたら、もうホームは人で溢(あふ)れて危険な状態になります…」(『東京人』一九九三年十一月号)▼国民性以前に、鉄道政策の貧困が根源にあるという視点だろう。尼崎JR脱線事故も、定時運行が難しい余裕のないダイヤ編成が背景にあった▼新幹線の脱線でけが人ゼロは幸運が重なった結果だが、JR各社は空の便に対抗すべく高速化にしのぎを削る。きょうは「鉄道の日」。便利さの陰で何を失うのか思いをめぐらせてみたい。

 

この記事を印刷する