四季に優劣をつける必要はないが、なんとかの、という冠言葉が多いことでいえば、秋が筆頭だろう▼たとえば「実りの秋」。果物など農作物の収穫が多いシーズンである。キノコなど山の幸、サンマなど海の幸も豊富。おまけに暑からず、寒からずで過ごしやすい気候だ。つまりは体も楽。というわけで、どうしてもこうなってくる。「食欲の秋」▼実際、何を食べてもうまい時季なのである。ただ、少々心配なのは、馬ならぬ、人肥ゆる秋の方。「餓死するくらいなら、消化不良で死にたい」と言ったローマの雄弁家キケロの気持ちは分かるけれど、やはり食べ過ぎはいけない▼肥ゆるどころか、痩(や)せたいと願う人が多いのが現代だ。「メタボ」などという言葉が人口に膾炙(かいしゃ)して以降、腹囲を気にする人も増えた。まこと、ダイエットには不向きな季節だが、食欲を抑え、カロリー摂取量を極端に減らすというのは、賢い方法ではないらしい▼近刊のS・アーモットほか著『脳のしくみ』によると、進化過程で飢餓を経験した脳は、空腹を感じると、代謝を下げることで、深刻な体重低下を防ぎ、体を守ろうとするものらしい。つまり、極端なカロリー制限は、ただ、つらいだけということにもなりかねない▼一番のお勧めはやはり運動を続けることだという。それにもふさわしい季節。そう、「スポーツの秋」でもある。