労働組合の役割である雇用の確保や労働条件の改善に力を尽くし、成果をあげる。9日就任した古賀伸明会長ら連合の新執行部には、何よりもその点が望まれる。
総評や同盟など労働戦線の統一が実現し、連合が発足してから11月で丸20年。労働界が望む政策を実現するため、大合同で政治への影響力を増すのが狙いだった。衆院選で連合が支援した民主党が大勝し、結成時に掲げた政権交代にこぎ着けた。
だが、組合本来の役割を十分に果たしてきたといえるだろうか。7月の失業率は過去最悪の5.7%。8月も5.5%だ。政党支援に力を割くあまり、雇用問題への取り組みが手薄になったことはなかったか。
連合にまず求められるのは、非正規雇用への取り組みである。今や働く人の3人にひとりはパート、派遣などの非正規労働者だ。ところが連合は、大企業の組合の発言力が強く、対策に熱心とはいえなかった。
非正規労働者の組織化を進め、賃金など労働条件の改善や正社員との処遇格差の是正に、もっと積極的に取り組んでほしい。全国の雇用者数に占める労働組合員の割合は、昨年6月末時点で18.1%まで低下している。発足時800万人だった連合の組合員も現在680万人を割っている。この現実を直視すべきだ。
連合は製造業向けを含め、仕事があるときに契約する登録型派遣の禁止を求めている。合理的な主張なのだろうか。そうした規制はかえって、働きたいときに働こうという人たちの職を奪いかねない。派遣規制への姿勢も再考を求めたい。
政府の行政刷新会議には連合元事務局長の草野忠義氏が入る。平野博文官房長官はパナソニックの労働組合出身である。だからこそ、政府や与党とは、けじめが欠かせない。
とりわけ、公務員制度改革という課題にどう対応するか。傘下の自治体職員の組合である自治労は、2005年の衆院選で民主党が打ちだした公務員の人件費削減に猛反発した経緯がある。連合は既得権にしがみつく集団に迎合すべきでない。働く人たち全体の利益にかなう行動こそが求められる。全国組織の連合には多額の活動資金があり、組合経理の透明性の向上も一段と問われる。