HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 10 Oct 2009 00:17:14 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:オバマ氏平和賞 理想主義へのエールだ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

オバマ氏平和賞 理想主義へのエールだ

2009年10月10日

 オバマ大統領がノーベル平和賞を受賞した。核廃絶など、その高い理想主義には称賛の半面、冷ややかな視線も注がれがちだ。冷戦終結後二十年。新たな壁崩壊への大きなエールとしたい。

 ノーベル平和賞は、内外政策で停滞感を見せ始めていたオバマ大統領にとって、またとない贈り物となろう。それ以上に、理想主義的傾向が強いオバマ演説に現実的判断から距離を置きがちな国際社会の指導者に対する大きなメッセージととらえるべきだろう。

 就任以来、高い支持率を維持してきたオバマ政権も、最近は伸び悩みを見せている。外交政策で最大争点だったアフガニスタン紛争では、米軍増派を求める現場司令官と政府の見解が食い違いを見せ、未(いま)だに合意に達していない。

 中東和平でも、イスラエルとパレスチナの首脳会談にはこぎ着けたものの、具体的な成果には結び付かなかった。内政面では最大課題の国民皆保険の導入をめぐる医療保険法案で行き詰まり感が拭(ぬぐ)えない。黒人初の大統領として就任し、世界中を沸かせた熱気と興奮はすでにない。

 核廃絶を訴えたプラハ演説では、核兵器を使用した唯一の国としての道義的責任に言及したものの、国際政治の現場では将来の理想との受け止め方が大勢だ。イスラムとの対話も同様だ。

 いま想起したいのは、理想が現実に転化する際に結集する歴史のエネルギーだ。二十年前のベルリンの壁の崩壊時、ドイツ統一が近い将来実現すると見通せた人は少なかった。歴史のうねりが逆戻りできない事態に至って、ようやく事実の追認が始まったのだ。米国に黒人大統領が誕生する、と本心から信じ得た人も、二年前まで果たしてどれくらいいただろう。

 オバマ演説を貫く考えには環境から人権まで、あらゆる問題をひとつの連環と見る発想がある。授賞理由にいう「オバマ大統領ほど世界中の関心を集め、より良き未来への希望を与えた人は稀(まれ)だ」はそのことだろう。

 オバマ大統領の理念は、自ら尊敬するキング牧師、ガンジーの平和主義にも通じるものだ。差別という人権問題が常にオバマ大統領の周辺を覆っている。そのただ中にあって数々の理想を掲げる、道徳的抑止力ともいえる無形の威信がオバマ大統領にはある。

 「冷笑的な従来の発想では何も解決しない」。オバマ大統領の言葉をこの機にかみしめたい。

 

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