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春秋(10/10)

 ノーベル賞ほど秘密に満ちた賞はない。候補者の名も審査の過程も極秘。受賞者への通知は発表当日までない。7年前に化学賞を受けた田中耕一さんは、ストックホルムからの電話に「どっきりカメラかと思った」と本気で驚いていた。

▼物理学賞と化学賞では学術機関のスウェーデン王立科学アカデミーが、世界中の科学者の仕事をひそかに観察している。やや性格が異なるのが平和賞である。「人類の幸福と平和に尽くした人物や団体」を決めるには、政治的な判断は避けられない。選考するのは、隣国ノルウェーの国会が任命した5人の委員だ。

▼今年その5人が選んだのは、核廃絶を唱えたオバマ米大統領だった。あっさり、きっぱり評価を下すのは、世界の風に敏感な小さな国だからこそできる業だろう。ノルウェーの人口は500万人足らず。米国や中国が平和賞を設けても、世界の人々は納得しまい。小国には、大国が真似(まね)できない潔い発信力がある。

▼平和賞をノルウェーに丸投げする奇抜な方式は創始者アルフレッド・ノーベルが、遺言に書き残していた。隣国同士が連携し、友好を保つための置き土産だったという説がある。現職の政治家を背中から押すようにして称(たた)えるのも、北欧の知恵なのだろうか。世界を驚かせた受賞に、平和へのメッセージを感じる。

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