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取り調べ可視化 欧米各国の実態調査が先決だ(10月9日付・読売社説)

 中井国家公安委員長が「新たな捜査の武器なしに可視化だけを進めるつもりはない」と繰り返し発言している。

 被疑者取り調べの全過程を録音・録画する全面可視化をする上で、司法取引やおとり捜査など、新たな捜査手法の導入が欠かせないというのだ。

 そうでなければ「治安に対する市民の要望は満たされない」とも中井委員長は述べている。

 民主党は冤罪(えんざい)の防止を理由に全面可視化を政権公約とした。中井発言はこれに前提条件をつけ、軌道修正した形だ。

 同じ閣内でも千葉法相は「できるだけ早く取りまとめをしていきたい」と意欲的で、方針の違いを見せつけている。治安の責任者としてまず公約ありきでなく、治安への影響を考えるのは、むしろ当然のことだろう。

 警察・検察当局は、裁判員裁判で被告の自白の信用性を立証するため、一部録音・録画を始めている。しかし、全面可視化には絶対反対の立場だ。

 殺人事件では、動機などを詳細に解明してこそ適切な処罰が可能となる。遺体の隠し場所も追及する必要がある。

 誘拐事件などで共犯者が逃走中のケースもあれば、性犯罪で被害者などのプライバシーに神経を使う事件もある。

 このような取り調べは、可視化のもとでは困難だと言うのだ。中井委員長の発言も、こうした捜査当局の危惧(きぐ)を理解しているからこそだろう。

 全面可視化の先進国とされる英国は、捜査方法から取り調べ、逮捕、起訴までの仕組みが日本とは大きく異なる。中井委員長が例に挙げた、自白すれば刑を軽減する司法取引などの制度がある。通信傍受に加え会話傍受ができる。黙秘は有罪と推定される。

 米国では犯罪を限定して録音・録画を行っている州があれば、制度自体がない州もある。ドイツも実施していない。

 導入を論議する前に、こうした欧米各国の実態を詳細に調査するのが先決ではないか。

 司法取引などの捜査手法の導入で、全面可視化に対する危惧をどこまで解消できるかも課題だ。この点も、欧米に学びつつ研究してもらいたい。

 全面可視化の声が高まったのも足利事件などの冤罪事件が相次いで明るみに出たからだ。警察・検察は、適正な取り調べと冤罪の防止に全力で取り組むことで信頼回復に努めなければならない。

2009年10月9日00時49分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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