戦艦「大和」と「武蔵」、青函トンネル、伊勢湾干拓事業。この三つを「昭和の三大バカ査定」と言い切った旧大蔵省の主計官がいた。一九八七年暮れの政府予算折衝で、旧運輸省が求めた整備新幹線計画の予算を拒否する際に引き合いに出したのだ▼大蔵省が何を言おうと、官僚と族議員をバックに予算を分捕ることが自民党の大臣の役割だった。政権交代でその光景が百八十度変わった▼補正予算の見直しは、動き始めた予算の執行を停止する初の試みだ。緊急性が低いなどの理由で削減した事業の総額は二兆五千百六十九億円。国土交通省の削減額は八千八百七十五億円(38・1%削減)だった▼「省あって国なし」が常識だった霞が関の官庁。縦割り意識からは、他の省庁に予算を回すという発想は浮かばなかった。それが今、予算の削り方で閣僚が四苦八苦しているのだから時代は変わる▼それでも目標の三兆円はまだ遠い。さらなる上積みは官僚の懐柔や抵抗が強まりそうだし、公共事業への大なたが景気に悪影響を及ぼす可能性もある▼税収の落ち込みも予想される中、政府は近く来年度予算の査定に入る。徹底した歳出見直しとマニフェスト実現の折り合いを付けるのは難しい。三バカ査定ではないが、失敗すれば後世からも指弾されるだろう。官僚主導を超えられるのか。歴史的な予算編成になりそうだ。