ファイル交換ソフトのウィニーを使った著作権法違反事件で、共犯(ほう助)に問われたソフト開発者を大阪高裁は逆転無罪とした。
様々なデータをひとまとめにしたファイルをインターネットでつながるコンピューター間でやりとりできるウィニーは、音楽や映像の違法コピーなどの「著作権侵害に特化した機能ではない」と判断し、そうした「価値中立のソフト」は「著作権侵害を主要な用途として使用させるように勧めて提供した場合」でない限り著作権侵害のほう助犯は成立しない、という判決である。
一審京都地裁はウィニーの価値中立性は認めつつ「著作権を侵害する状態で利用されるのを十分認識しながらネットで公開を続けた行為が、ほう助にあたる」として罰金150万円を科した。ネットを通じて広まったウィニーは著作権侵害や情報流出事故を多くもたらしており、不特定多数に公開・提供をやめなかった開発者はその結果に責任の一端を負うべきだとの判決だった。
ただ一方で、開発した技術を他人が悪用した行為に責任をとらせる法解釈には、技術開発の意欲を萎縮させる悪影響も否定できなかった。
高裁判決が指摘するとおり、今回の事件は「これまでにない新しい類型のほう助犯であり、刑事罰を科するには慎重な検討を要する」のは間違いない。一、二審で結論が逆転したのは「新しい類型」に既存の法を適用する難しさを示している。
しかし、慎重な検討を要さずに言えることもある。ソフト開発者の社会的、道義的な責任についてだ。
法廷に提出された資料によると、ウィニーのネットワーク上にあるファイルの40〜47%が違法コピーの著作物と推測された。自分が開発し社会に広めたソフトが違法行為を助長しているのを知ったなら、悪用させないようソフトを改良するなり公開をやめるなりの対策を講じるのは開発者の当然の責務である。
ネット上ではこれからも「新しい類型」の著作権侵害が頻発するだろう。著作権者、著作物を利用する人、著作物の流通手段を開発・提供する人たちの相反する利害を調整する、ネット時代に対応した法律や制度の整備を急がなければならない。