トイレはなるべく外出先で済ませる。職場では下戸のふりをして酒席の誘いを絶つ――。家計の無駄を削ろうと読者が試した涙ぐましい節約術が本紙に載っていた。外食を減らしたり家族旅行をやめたりする程度では大いに甘いらしい。
▼鳩山政権の閣僚たちも家計簿と格闘する主婦の心境だろうか。刑務所職員の宿舎建て替え費用やら皇居周辺の街灯整備費やら、役所が差し出した「無駄」は様々だ。そんなお金を積み重ねて今年度補正予算の凍結額はしめて2兆5000億円。これでもまだ目標に届かず、削れ削れの大号令はなお熱を帯びている。
▼すべては選挙で約束した「子ども手当」などの財源をひねり出すためだから、後へは引けないのだろう。とはいえ補正凍結だけでこの騒ぎ。本番の来年度予算づくりで本当に何兆円も浮かせられるの、とハラハラするのが人情だ。無駄な公共事業をやめるのはいいけれど、加減を間違えれば景気にまた影が落ちる。
▼きっと冷ややかに見守っている官僚たちを向こうに回し、金看板の政治主導でことを成し遂げられるかどうか。来年度予算は何とか乗り切ったとしても、次の年は、さらにその次はどうするのかと思案しきりの政治家もいるかもしれない。ええい面倒だと家計簿を放り投げ、しゃにむに借金に走る姿は見たくない。