トルコのイスタンブールで開いた国際通貨基金(IMF)・世界銀行総会など一連の国際会議は、中国など新興国の台頭を改めて印象づけた。日米欧先進7カ国(G7)の時代は終わった。そんな声は強いが、その先の枠組みづくりは容易ではない。
国際経済協力の場としては、新興国も含めた20カ国・地域(G20)が「第1の舞台」になると、米ピッツバーグで開いたG20首脳会議は合意した。だが国際金融の話をするには、G20会議ではあまりに間口が広すぎ、参加者の利害も異なりすぎる。
ならば、日米欧に中国を加えたG4をつくってはどうか――。G7財務相・中央銀行総裁会議の当日、米国がG4の創設を検討していると伝えられた。ガイトナー米財務長官はG7会議の席上、会議を秘密会にすることを提案している。
主要な金融・為替市場を持つ国々が本音で議論する場を維持しつつ、経済発展の著しい中国も相互監視の舞台に取り込もう。米国のG7改造論の狙いはそこにある。G7の前身であるG5体制に日本を取り込み、経常黒字是正や内需拡大を求めたのと同じ発想だ。もっとも、したたかな中国はおいそれと乗ってこない。
英独仏伊の欧州各国も、欧州連合ないし欧州中央銀行だけの参加となれば、発言力が低下するだけにG4構想には抵抗する。脱G7を唱えていたフランスが、今さらG7の意義を強調しだしたのは象徴的だ。新興国の比率を最低5%増やすことに決まったIMFへの出資について、欧州が自らの出資比率低下に難色を示すのと、そっくりである。
G7体制を前提にしてきた日本もかじ取りが難しくなる。例えば2008年10月に円が急騰した際にも円高是正に的を絞ったG7緊急声明をまとめ市場をけん制するなど、G7会議を通貨外交の舞台にしてきた。
今回のG7会議では為替の過度な変動への警戒を示した。だがその前のG20首脳会議が米国の経常赤字を意識し対外不均衡の是正という表現を用いた結果、ドル安傾向が止まらない。舞台の変化が実感されよう。
日本の経済政策は著しく内向きになっている。米欧や中国の出方を見極めつつ、新しい国際金融秩序の形成に積極的に関与すべきだ。