日曜日の朝七時すぎ、目覚まし時計のけたたましい音が静寂を破った。耳障りな電子音が延々と続く。安眠を妨げられた近隣マンションの住民が眠たげな顔で窓を開けた▼なかなか特定できない「発生源」に不快な表情が浮かぶ。三十分ぐらいだろうか。うんざりする長い時間が過ぎて、音はぴたりとやんだ。マンションの管理者が迷惑な住民の部屋を突き止めたようだ▼大きな騒ぎにならずに収まったが、生活音をめぐるトラブルは珍しくない。中には度が過ぎた抗議がもめ事につながるケースもある。先日、東京都国分寺市で制定された生活音をめぐる全国初の条例もそんな背景があるようだ▼市議会が全会一致で可決した条例は、ごく普通の生活音を出しただけの人に対し、執拗(しつよう)な抗議や嫌がらせなどの迷惑行為を禁じている。騒音を規制する条例は全国にあるが、抗議する側に向けた条例は異例だ▼きっかけはピアノの音などをめぐり、隣人から怒鳴り込まれるなどのトラブルが長年続くあるマンションの居住者らの陳情だ。条例では市長が迷惑行為をやめるよう要請できるが、解決に向かうのか▼マンションの階上に幼児がいれば、走り回る音が響く。子どもは社会全体で育てようと普段はきれいごとを言っても、文句を並べたくなるのが人間の性(さが)だ。こじれれば顔も合わせにくくなる。ご近所付き合いは難しい。