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地図の上下を逆にすると、もろもろのイメージが変わる。たとえば台風は、日本をめがけて攻め上がってくる印象だが、さかさに見れば、振り下ろされる刀のようだ。太平洋に向けて無防備に腹を出した列島を、袈裟懸(けさが)けにせんとばかりに狙ってくる▼手ごわそうな一太刀(ひとたち)が、本土に迫っている。この新聞がお手元に届くころ、台風18号は四国から東海のどこかに上陸している可能性が強い。神出鬼没で暴れるゲリラ豪雨ではなく、いわば強大な「正規軍」の襲来である▼秋の台風は、東の海上へそれることが多い。しかし今年は、盛夏には昼行灯(ひるあんどん)だった太平洋高気圧が、いまになって踏ん張っていて、コースを列島寄りに押しているそうだ。過去10年で最大級というから、進路にあたる所はくれぐれも注意をしていただきたい▼作家の山口瞳が豪雨の体験を書き残している。東京郊外の自宅近くには山も川もなく、水害の心配はないと思っていた。だが、あるとき水浸しになる。家のあたりの土地が周囲の地域より、50センチほど低かったからだという▼高きから低きへ水は流れる。ふだんは気にもしないわずかな高低が、大量の水を集中させたのだった。安全だという思い込みは、かくもはかない。専門家によれば、自分のいる場所を「知る」ことが身を守る鉄則である▼殴り雨、ごず降り、ざぶり、滝落とし……。地方々々に様々な、激しい雨の呼び名がある。加えて今日は猛烈な風も吹くだろう。自然の一太刀はかわせない。だが被害をかわす備えと行動は、われわれ次第である。