北朝鮮が核問題をめぐる六カ国協議に、条件付きで復帰する可能性を示唆した。他の五カ国は核放棄を促すという目標の下に、北朝鮮を対話の席に着かせる努力を続けたい。
北朝鮮の金正日総書記は平壌を訪問した中国の温家宝首相と会談し、「米朝協議の結果をみて、多国間の会談を行う用意がある」と表明。「多国間会談には六カ国協議も含まれる」と明言した。
北朝鮮は五月の核実験以来、六カ国協議について「永久に終わった」「制裁を論議する場にすぎない」として無用論を主張し、ミサイル試射も続けた。少し柔軟姿勢になったといえよう。
オバマ米政権は「六カ国協議の枠内なら、米朝協議に応じる」と呼び掛けてきた。近く二国間の協議が行われるとみられる。
金総書記の発言には、核問題や体制保証は米国とだけ話し合う、うまくいけば六カ国協議の存在は無視できるというしたたかな計算がうかがえる。米国は北朝鮮のペースに乗るべきではない。
北朝鮮が対話姿勢に変わったのは、国連安保理の制裁決議が効力を発揮したことが大きい。核やミサイル開発に関連する貿易が制限され、海外資産も凍結されて、経済は大きな打撃を受けた。
中国の立場は微妙だ。中朝両国は今回、経済技術協力や観光など八分野で協定に調印した。温家宝首相は中国ナンバー3。自ら訪朝して金総書記に六カ国協議復帰を説得したが、経済支援という「見返り」も必要だった。
中国が支援を約束したことが、制裁決議の効力を弱めるという矛盾にもなりかねない。
この約十五年間、北朝鮮の核やミサイル問題が起きるたびに米国と中国が乗り出して収拾を図ったことは否定できない。この状態が固定化すれば、六カ国協議は米中両国がつけた道筋を追認するだけの機関になってしまう。
北朝鮮の核は隣接する韓国や日本、ロシアにとって脅威である。また北朝鮮が核放棄に進めば、これら三国も含めた計五カ国が代替のエネルギー支援やインフラ整備をすると合意している。六カ国協議は不可欠な存在だ。
北朝鮮にとっても、経済再建に必要な支援を得るには、六カ国協議に参加することが近道だ。
今月十日に北京で日中韓首脳会談が開かれる。中朝会談の成果を聞き、北朝鮮を協議に復帰させるため連携を強めたい。
この記事を印刷する