HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 07 Oct 2009 00:17:16 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:イラク空輸 黒塗りが隠した“うそ”:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

イラク空輸 黒塗りが隠した“うそ”

2009年10月7日

 航空自衛隊がイラクで行った空輸活動の記録が開示され、「人道復興支援のため」という過去の政府説明がぐらついている。これまで派遣の正当性を強弁してきた防衛省は疑問に答えるべきだ。

 開示のハードルが高いとされる防衛情報。今回の記録も、過去の請求では日付、発着地、人数、物資の数量などの大半の情報が黒塗りだった。それが一転、全面開示された。政権交代が起きたからこそと、まずは評価できる。

 公開情報によると、二〇〇六年七月から〇八年十二月までの百二十四週間で空輸した二万六千人余の67%に当たる一万七千六百五十人は米兵で、実態は米軍の後方支援だったことは明らかだ。イラク特措法の実施要項は武器・弾薬の輸送を禁止していたのに、米兵が人数を上回る小銃・拳銃を持ち込んだ例もあり、武器輸送の抜け道になった可能性もある。北沢俊美防衛相は六日の会見で「米軍の後方支援に見えるが」という質問に「似たような感覚で受け止めている」と述べた。

 これまで防衛省は非開示の理由として「任務に支障が出る」「関係国などの信頼を損ねる」の二点を挙げてきた。今回は、関係国の了解も得られたとして開示に踏み切ったが、本当に関係国が開示に異を唱えていたのかも疑われる。米兵の大量輸送の実態を隠してきたと言われても仕方がない。

 空輸活動について、防衛省内には「復興支援に当たる国連職員を優先させていた」「丸腰の兵士も多かった」という反論があるようだ。ではなおのこと、今回の開示をきっかけに活動の実態について納得のいく説明をすべきだろう。一層の情報公開を求めたい。

 9・11テロ後のアフガニスタン攻撃、イラク戦争を通じて、日本はインド洋での洋上補給、陸自のイラク派遣と、米国の要求に応じる形で海外に自衛隊を派遣してきた。これを機に、継続が焦点のインド洋での給油実態も明らかにしてはどうだろう。

 政権交代で実現した今回の情報開示は、年を追って拡大してきた自衛隊派遣の実態について疑問を投げかけた。「イラク戦争への支援は正しかった」との一点張りで米国追従を続けてきた前政権の矛盾が表面化したといっていい。

 今こそ、イラク戦争の正当性も含め、一連の活動を総括すべきときだ。新政権は今回の開示を、そうした検証作業の第一歩にしてほしい。

 

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