二〇一〇年度の税制改正は道路特定財源の暫定税率廃止が焦点の一つ。環境対策に必要な財源をいかに確保していくかも大きなテーマだ。時代の要請に応じた新たな税制の姿を示してほしい。
道路特定財源の上乗せ暫定税率は第一次石油危機後、道路計画の財源不足に対応するために導入され、ガソリン消費などの需要抑制、狂乱インフレ鎮静化の役割も担った。しかし、政策目的が達成されたはずなのに、三十年以上も経過した今なお、不要とされる道路建設にも注ぎ込まれているのが現実だ。
昨年、当時の福田政権が暫定税率を維持したまま道路財源の全額を道路以外にも使える一般財源にすることを決めたが、道路族議員らの抵抗が強く、道路に巨費が投じられる実態は改まっていない。その意味では、民主党の政権公約である「廃止」は筋が通っていると言うべきだろう。
暫定税率が廃止されると、来年四月からガソリン小売価格は一リットル約二十五円下がる。ドライバーの多くは歓迎するだろうが、九月のシルバーウイーク期間中、全国の主要高速道路で五月の大型連休を上回る大渋滞が起きた。麻生前政権時代から始まった料金の割引が主因という。これに民主党が政権公約に掲げる暫定税率廃止や高速道路の無料化が加われば、さらなる渋滞は避けられないだろう。
藤井裕久財務相は暫定税率廃止について金融危機で落ち込んだ景気の回復が目的と説明している。値下げ分が消費に回り需要喚起は期待できるだろうが、鳩山首相がCO2(二酸化炭素)減らしに邁進(まいしん)すると宣言したのにCO2を増加させては、政策に首尾一貫を欠く。
鳩山政権はガソリン税などを「地球温暖化対策税」、いわゆる環境税として一本化する方針を打ち出したが詳細な制度設計は明らかにしていない。暫定廃止による二・五兆円の減税と高速無料化を合わせると四兆円近くに上る。
政府は公共事業費の削減などでひねり出す算段のようだが、麻生政権から引き継いだ補正予算の削減ですら四苦八苦しているのが現状だ。
鳩山首相が表明した温暖化ガス削減目標は野心的とされる25%。環境税は実現への費用負担を国民に求めるものだ。新たな政府税制調査会の初会合が近く開かれる。暫定税率廃止とともに、環境税創設や低炭素社会の実現に向けた新たな税制の理念を磨き、具体化へのきっかけとすべきだ。
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