ツグミという鳥は、ほとんど鳴かないのだそうだ。秋からはとりわけ無口になるらしい。ひたすら口をつぐむ鳥だから付いた名がツグミ、と物の本にある。ひょっとしたら、今をときめく官邸のハトもそれをまねているのかもしれない。
▼鳩山首相の政治資金管理団体をめぐる献金問題について検察が捜査を始めた。亡くなった人からのカネまで収支報告書にぞろぞろ、という選挙前からの疑惑である。首相にはこのさい情理を尽くして説明してほしいものだが沈黙を決め込んでいる。「捜査に影響する発言は避けなければならない」との申し開きだ。
▼野党になった自民党は手ぐすね引いて待ち構えているという。このままでは臨時国会がスキャンダル追及で混乱しかねないし、せっかくの政策論戦もかすんでしまう。鳩山さんもそれは本意ではあるまい。逃げる黙るの政治家に世間が抱く思いは「よほど都合の悪いことでも隠しているのか」という疑心であろう。
▼かつて勢いあまって、検察の動きを「国策捜査だ」と難じたこともある首相だ。それがこんどは「捜査への影響」をタテに口を閉ざすとはいかにも苦しい。ちなみにハトは「クークー」と鳴くという。ツグミになったハトの心境は「苦苦」だろうか。そろそろ真相を洗いざらい打ち明けてラクになったほうがいい。