HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17470 Content-Type: text/html ETag: "4074d2-443e-25a20680" Cache-Control: max-age=5 Expires: Tue, 06 Oct 2009 02:21:10 GMT Date: Tue, 06 Oct 2009 02:21:05 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 天声人語

天声人語

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

2009年10月6日(火)付

印刷

 俳句には遊び心や想像力が生んだ季語があって、たとえば実際は鳴かないものまで鳴かしてしまう。いまの季節なら「蓑虫(みのむし)鳴く」がある。秋風にゆれる蓑虫が親を慕って細く鳴く。そんな虚構で寂寥(せきりょう)をかもし出す▼春なら「亀鳴く」だろう。〈亀鳴くや一升瓶に手が伸びる〉成田千空。くぐもった、のどかな声の空想は、春愁を呼びさますようである。ところで、政界の「亀さん」も声は負けていない。亀井静香金融相の、いわゆる「借金の返済猶予」をめぐる発言が様々に波紋を広げている▼中小企業の借金や、個人の住宅ローンの返済を、3年ほど猶予する法案を、国会に出すのだという。期待する人もおられようが、おおむね四面楚歌(しめんそか)である。私的な契約への国家権力の介入は、自由経済では禁じ手とされているからだ▼あおりで株価を下げた銀行を、「脆弱(ぜいじゃく)な銀行は、営んでいる資格がない」と一喝した。だが、意気軒高だった声が、ここ数日はくぐもり気味だ。とはいえ意気消沈ではない。政権の内外で現実的な落とし所を探っているらしい▼もともとがパフォーマンス、という見方もある。強きをくじき、弱きを助ける。「徳政」で耳目を集めれば国民新党の株は上がる。立ち消えでは収まるまいが、そこは何らかの政策で手当てをする――そんな憶測だが、どうも真意は読みにくい▼〈亀鳴くや男は無口なるべしと〉田中裕明。人情家で聞こえる亀井さんのことだ。情と理がうまく溶け合って摩擦を起こさぬ善政を、誰しもが望んでいよう。口よりも実行を第一にして。

PR情報