二〇一六年夏季五輪の開催地はリオデジャネイロ(ブラジル)に決まり、東京は落選した。早くも二〇年夏季五輪招致を目指せとの声があるが、捲土(けんど)重来を期すには都政の問題を克服してからだ。
国際オリンピック委員会(IOC)委員による二回目の投票で東京の夢は消えた。名古屋はソウルに敗れ去り、北京五輪を決めた際の投票で大阪が得たのは六票だけだった。夏季五輪の招致で日本の都市は三連敗だ。
リオデジャネイロ(リオ)の「南米で初開催」との訴えは分かりやすく、決選投票まで残ったマドリードはサマランチIOC前会長の人脈がかなり効いたようだ。
招致関係者は東京の敗因としてロビー活動の貧弱さや国会決議がずれ込むなどの出遅れ感を挙げるが、それだけではないだろう。
地元の盛り上がりに欠けていたのは、投票するIOC委員にマイナス要素として働いたにちがいない。今年二月にIOCが実施した国内支持率調査で東京は56%。四都市のうち最低の数字だった。
石原都政は難題を抱えている。ずさんな融資によって経営難に陥っている新銀行東京や、移転予定地で土壌汚染が発覚した築地市場の問題を解決しなくては、五輪招致の支持率は伸びないだろう。
二度目の五輪を開催する意義付けも十分理解されたかどうか。
東京は「施設が都心から半径八キロ圏内のコンパクトさ」「環境負荷が少ない五輪」をアピール。国連演説で温室効果ガス「25%削減」を唱えた鳩山由紀夫首相もコペンハーゲンに乗り込んだ。
「環境」は世界的で、時間のかかる問題だ。東京を視察したIOC委員から「われわれは国連ではない」といった発言もあった。
期間が限られ、都市という地域開催の五輪でどう実現していくのか。招致の旗印とするなら、説得力のある具体的計画案がいる。
敗北直後からスポーツ関係者からは「もう一度、立候補してほしい」との声が出ている。リオも三度目の挑戦で悲願を果たした。
東京が再び手を挙げるのなら、まずは今回つぎ込まれたという招致費用百五十億円の使途を明らかにし、都政の課題をどう解決するか示すべきだ。
そのうえで「何のために東京で二度目の五輪を行うのか」という開催の理念を再構築し、国内に説明しなければならない。
四年後は石原都政ではないだろうが、この流れで招致運動を続けても、前車の轍(てつ)を踏むだけだ。
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