HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 04 Oct 2009 21:18:09 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:有名なメダリストではない。日本と縁が深い国の選手でもないが…:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 筆洗 > 記事

ここから本文

【コラム】

筆洗

2009年10月4日

 有名なメダリストではない。日本と縁が深い国の選手でもないが、記憶に残る人がいる。一九六四年の東京五輪で、陸上男子一万メートルに出場したセイロン(現スリランカ)のカルナナンダ選手だ▼他の選手がゴールした後、脇腹を抱えながら黙々と周回遅れでトラックを三周走った。最初は笑っていた観衆もゴールの瞬間、七万人が総立ちで二十八歳の若者を迎えた。小学四年の国語教科書で「ゼッケン67」として紹介されたので思い出す人もいるかもしれない▼新幹線や高速道路、地下鉄などインフラを整備して迎えた東京五輪は、敗戦から復興を遂げた姿を世界に示そうと国民が一丸になれる時代だった。カルナナンダ選手への感動も、世界に追いつこうとする自国の姿をどこか重ね合わせたからなのか▼二〇一六年の夏季五輪大会の開催都市は、地球の裏側にあるブラジルのリオデジャネイロ。経済成長が著しいブラジルでの開催は、四十五年前の東京五輪を思い起こさせる▼東京の敗因は、都民の関心の低さも大きい。支持率が四都市最低の約56%では「南米初の五輪を」というリオの熱意に吹き飛ばされるのは当然だ▼「招致は実らなかったが苗は植えた」。石原慎太郎都知事は再挑戦に前向きだが、今回の招致費は約百五十億円。なぜ、また「東京五輪」なのか、明確な説明がなければ、都民の理解は得られない。

 

この記事を印刷する