二〇〇八年は政治団体の収入、支出はともに前年より減少したが、鳩山由紀夫首相の「故人献金」や西松建設による違法献金など問題は後を絶たない。政治資金の透明化に向けた抜本改革が必要だ。
総務省が公表した〇八年分の政治資金収支報告書(中央分)によると、政党など政治団体の収入総額は千二百五十二億八千万円、支出は千百二十億六千万円で、前年比でそれぞれ2・0%、22・3%の減となった。
支出の大幅減は〇八年に国政選挙がなかったことが主因だが、ピークだった一九九〇年の六割に減っており、「カネのかからない政治」に向けた流れは歓迎したい。
そうした中、首相の「故人献金」は看過できない問題だ。
首相は、自身の資金管理団体「友愛政経懇話会」の〇五〜〇八年の収支報告書に関し、公表義務のある五万円を超える個人献金をした延べ百九十三人分(計二千百七十八万円)が虚偽記載だったことを明らかにしている。これらには、故人や献金していない人も含まれており、〇八年の報告書でも六十九人中五十五人を削除した。
首相は今年六月の発覚時、公設秘書が個人献金を集める仕事を怠り、分かったら大変だと思ったからと説明したが、虚偽記載は理由にかかわらず、政治資金公開制度の根幹を揺るがす。国民の目は欺けるだろうという安易な気持ちがあったとしたら言語道断だ。
首相は引き続き、国民の納得のいくような説明に努めるべきだ。
また同報告書によると、公表義務のない五万円以下の匿名献金が二千七百万円近くに達し、他の政治家と比べて突出している。
西松事件などを教訓に、民主党は衆院選マニフェストに、企業・団体献金の三年後からの禁止や、個人献金促進のための税制改革実施を明記した。
企業・団体献金から個人献金への転換は望ましいが、現行基準のままで、公表義務のない個人献金が増えれば、透明度は下がる。
与野党は、個人献金を促進しつつ、透明度を高める制度づくりを競い合うべきだ。政権交代の成果を政治資金面でも実感できるよう、首相は先頭に立ってほしい。
民主党五議員の政治団体がキャバクラなどの飲食代を政治活動費として計上していたことも明らかになったが、政治資金の使途として適切だったとは到底言えない。与党になればより厳しい目が注がれることも自覚すべきだ。
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