HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 56970 Content-Type: text/html ETag: "fe60f-11c1-4b1b63c0" Expires: Fri, 02 Oct 2009 23:21:16 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 02 Oct 2009 23:21:16 GMT Connection: close 10月2日付 よみうり寸評 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



現在位置は
です

本文です

10月2日付 よみうり寸評

 〈吾妹子(わぎもこ)が見し(とも)の浦のむろの木は常世にあれど見し人ぞなき〉――万葉の歌人・大伴旅人の歌◆広島県福山市の鞆の浦は瀬戸内海の景勝地で、古くから潮待ちの港だった。この歌は旅人が任地の九州・太宰府から京へ上る際、この地に寄港して詠んだ◆九州へ下る際、ともにこの景観を眺めた妻は赴任後、間もなく亡くなった。旅人は独り京へ戻るこの道中で妻を(しの)ぶ歌を5首詠んだが、うち3首が鞆の浦での作。〈鞆の浦の磯のむろの木見むごとに相見し妹は忘らえめやも〉が2首目で哀切の思いはさらに募る◆万葉の昔からの景観、鞆の浦を巡る「保護か開発か」の訴訟で広島地裁がきのう、県、市が進める埋め立てと架橋の計画を差し止める判決を下した◆「景観の保全を犠牲にしてまでもするべき事業かどうかは疑問。事前の調査は不十分。完成すれば復元は不可能」とした。景観保全で公共事業が事前に差し止められるのは初めて◆これまで劣勢だった景観派に光。公共事業見直し、環境重視の時代の流れを思う。

2009年10月2日14時46分  読売新聞)
現在位置は
です