二つの家の確執の中で燃えさかる恋を描くのが、おなじみ、シェークスピアの『ロミオとジュリエット』▼「なぜに、あなたはロミオなの?」という有名な独白に続き、ジュリエットは二人を縛る家名への思いを語る。「名前が何だっていうの? バラと呼んでいる花を何かほかの名前で呼んでみたって、甘く香ることに変わりはないわ」▼この言い回し、英語では決まり文句的に「大事なのは実体であり、名前は重要ではない」と言う時に使われるようだ。そういうことは多いが、無論、名前が大事ということも少なくはない▼たとえば、急ごしらえながら、先の総選挙で政党要件を満たす五議席を獲得した新党「みんなの党」。渡辺喜美代表はどう言うか知らないが、やはり、その絶妙なネーミング、政党名の力も大きかった気がする▼さらに、こんな研究もある。それで愛を感じるせいか、名前をつけた牛は、名前をつけない牛より出す乳の量が多くなるのだという。これを“発見”した英国の研究者二人は最近、米ハーバード大で授賞式があった今年の「イグ・ノーベル賞」で獣医学賞を得た▼ユーモア科学誌などの主催だが、単なるおふざけではなく、愉快だが、独創的で真摯(しんし)な研究が対象。日本人も、しばしば受賞している。確かに賞の名前も妙だけれど、ジュリエットも言っている。「名前が何だっていうの?」