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天声人語

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2009年10月3日(土)付

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 コペルニクスが地動説の公表を決意したのは最晩年だった。科学史に輝く一冊「天体の回転について」の初版本は死の床に届いたとされる。元になる論文を友人に配ってから30余年が過ぎていた▼当時の宇宙観は、あらゆる天体は地球を中心に回っているという天動説。異を唱えれば教会に迫害されかねない。中世に固まった頑迷な秩序を覆すのは、勇気と労力が要る作業だった▼与野党の立場が逆転し、霞が関でコペルニクス的転回が多発している。最たるものは概算要求のやり直しだろう。予算を目いっぱい求める役どころだった各大臣は、自分の省庁の要求を削り倒せと命じられた。政権公約を実現するには7兆円をひねり出さねばならない▼節度は自ら保てとばかり、半世紀近い習わしだったシーリング(要求上限)も消えた。旧政権下のメニューをどれほど削るかで、官僚たちの忠誠ぶりや大臣の手腕が試される。大食い競争からダイエット合戦へ、天と地ほどの差である▼予算見直しの試金石は、「アニメの殿堂」でみそをつけた補正予算の執行取りやめだ。各省の返上分はなかなか目標の計3兆円に届かない。こうした政治主導をつかさどる体制はまだ作りかけで、走りながら考えている様子がうかがえる▼古い秩序を壊して築くべきは、すべてが国民を中心に回る世の中であろう。わけても税金の使い道は国家の根幹であり、本気で白紙から改めるなら「ミニ革命」どころか「プチ建国」に近い。つち音、ホコリ、日々高し。しばらくは突貫工事の首尾を見守りたい。

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