強い地震がインドネシア・スマトラ島沖で発生し、多数の犠牲者が出ている。日本が最も能力を発揮できる手段で、交流の歴史が古い被災地の人々の救援・復旧を手助けしたい。
実は今回の地震は、国際協力機構(JICA)と科学技術振興機構(JST)が連携、日本とインドネシアの地震研究者らが協力して、「インドネシアにおける地震火山の総合防災策」を進めている最中に起きた。
スマトラ島沖は、オーストラリアプレートがユーラシアプレートの下に沈み込む、地震活動の活発な地域である。今回の震源はオーストラリアプレート内部とみられる。被災の中心パダン付近では、プレート境界の地震が起きていない。近い将来さらに大地震が襲うのを心配する声も強い。
建物倒壊でがれきの下から次々に遺体が発見されるほか、橋の崩落、地滑りも伝えられ、犠牲者はさらに増える恐れがある。最大の問題は耐震性の弱いれんが造りの建物が多く、震度はそれほどでなくても容易に崩れることだ。
二〇〇四年末、スマトラ島沖で地震と津波が起き、インド洋沿岸諸国が大きな被害を受けたのは、周知の通りである。
東南アジアの災害に詳しい名古屋大学大学院の海津正倫教授(自然地理学)によると、インドネシアでもこの時に被害を受けた地域では、建物の改良、避難・誘導の啓発も進んだ。しかしさしたる被害のなかった地域などでは、防災対策は遅れ気味である。
日本政府は最大限の援助をすると表明した。江戸時代から交流があり、太平洋戦争後もインドネシアの国づくりに協力してきたわが国として当然だろう。救援物資、医薬品提供と医療チームの派遣、災害復旧の支援も決めた。
それらはもちろんのこととし、阪神・淡路大震災などを経験して防災の研究成果を持つ日本に望まれる貢献とは、インドネシア自身が災害に強い国づくりを進めるノウハウと支援の人材の提供、人材育成ではないか。
両国の研究者による「地震火山の総合防災策」はその一つにすぎない。インドネシアにおける地震・津波発生の仕組みを解明するとともに、建物の耐震強化や防災施設整備、避難体制やハザードマップの住民への周知に至るまで積極的に協力したい。
また、これらの協力を広げることは、将来の外交の強化にもつながるはずである。
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