HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 01 Oct 2009 20:17:32 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:野球少年の心理は微妙だ。嫌いなチームでもサインに応じてくれ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年10月1日

 野球少年の心理は微妙だ。嫌いなチームでもサインに応じてくれた人は好きになる。先日、六十七歳で亡くなった土井正三さんはそんな選手だった▼小学六年の時、友人に誘われ、多摩川の巨人軍グラウンドに秋季キャンプを見学しに行った。左翼から三塁にコンバートされた高田繁選手(現・ヤクルト監督)が泥にまみれて白球を追っていた姿が印象に残る▼長嶋茂雄監督が就任一年目に最下位へ転落した年のシーズンオフ。汚名返上とばかり、緊迫感が漂う中、少年が差し出した粗末な紙に土井さんは気さくにサインをしてくれた。今も宝物だ▼通算打率は2割6分3厘。65本塁打。華々しい数字ではないが、堅実な守備や確実に決めた犠打、相手のすきを突く走塁で巨人の黄金時代を支えた名脇役だった。ONに直言した数少ない選手だった▼心残りはオリックスの監督時代、振り子打法で頭角を現したイチロー選手の才能を見抜けなかったと言われたことだろう。「あの時の反骨心がイチローのベースにあるのでは。その意味で(二軍に落とした)判断は良かったと思っている」と述懐した。葬儀にはイチロー選手から弔電と花が届いた▼ホームランバッターとエース級をいくら集めても、守備や犠打で支える選手がいなければ強いチームにはならない。土井さんの存在はどんな組織にも通じる原則を教えてくれた。

 

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