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春秋(10/2)

 縄文の昔よりはるか昔、まだ土器を持たない旧石器文化が日本列島にもあったことを突き止めたのは在野の研究者、相沢忠洋だ。行商のかたわら、群馬県・赤城山のふもとを踏査していた彼は台風一過のある日、大きな手掛かりを得る。

▼崩れ落ちた赤土、つまり数万年前の地層にキラリと光る黒曜石のかけらである。幻の石器発掘につながるこの出合いは著書「『岩宿』の発見」の名場面だ。考古学の世界には同じような幸運が潜んでいるのだろう。島根県で見つかった日本最古とみられる旧石器も、豪雨に洗われた崖(がけ)に顔をのぞかせていたという。

▼そこは12万年前の地層だから、これまでの出土例より3万年はさかのぼるらしい。かつて「神の手」と呼ばれた研究者が60万年前の遺物などとおびただしい数の発掘をでっち上げ、信頼がすっかり揺らいだ旧石器研究の再出発になるだろうか。謎に包まれた列島の人類史に、こんどこそ偽りなき光をあててほしい。

▼あの捏造(ねつぞう)を重ねたのは相沢に私淑する在野の人だった。ロマンを求め、各地でコツコツと踏査に励む研究者たちはどんなに悲しんだことだろう。偶然がもたらしたともいえる今回の発見は、そんな人々をまた勇気づけるかもしれない。岩宿遺跡の発見から今年は60年、納豆の行商を続けた相沢の死から20年である。

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