企業の景況感は前に比べ改善しているものの、その水準はなお低い。設備投資を大幅に減らす企業が多く収益計画も下方修正の傾向――。日本銀行の9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で明らかになった約1万社の実態だ。この調査の結果も受けて日経平均株価はほぼ2カ月ぶりに1万円の大台を割った。
鳩山内閣は景気の再悪化、いわゆる二番底を防ぐため短期と中長期の成長政策を早く示す必要がある。
業況判断指数は景気が「良い」と「さほど良くない」「悪い」の3つの選択肢のなかで「良い」と答えた企業の割合から「悪い」という企業の割合を差し引いた値。大手製造業はマイナス33と6月の調査(同48)より改善した。しかし「良い」は全体の6%にすぎず「さほど良くない」と「悪い」を合わせると回答企業の94%にのぼる。中堅、中小製造業も同じような内容だ。
リーマン・ショック以降に急速に悪化した景気は3月を底に戻りつつあるが、全体にまだまだ暗い。それを反映して今年度の設備投資は大手製造業で25.6%減、それも6月時点に比べ1.7ポイントの下方修正だ。
中国など各国協調による財政・金融政策の効果で経済は少し持ち直したが、持続的な回復に自信を持てないのが企業経営者の気持ちだろう。
その不安感を助長しているのが物価の下落だ。8月の全国消費者物価は生鮮食品を除いた指数が前年同月比2.4%下がり、4カ月続けて最大の下落率を更新した。不規則な変動をしがちなエネルギーと食料を除いた指数でも同0.9%の下落。デフレ傾向が続けば、企業の投資や個人の消費を慎重にさせ、一層の物価下落を招いて悪循環に入る。
鳩山内閣は前政権下で成立した補正予算のうち不要不急のものを取りやめて、子ども手当などの財源にする考えだ。より経済効果の高い支出に振り向けるのは納得できるが、財政政策が景気回復の足を引っ張らないよう細心の注意が必要である。
デフレの悪循環を防ぎ設備投資や消費を増やすには、政府による中長期の経済運営方針が欠かせない。環境対策、規制・税制改革、貿易自由化、社会保障改革などをどうするのか。早く青写真を見せてほしい。