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中華人民共和国が60周年を迎えた。
「中国は世界の東方にそびえ立っている。社会主義だけが中国を救い、改革開放こそが中国を発展させた」
胡錦濤国家主席は、毛沢東が建国を宣言した天安門楼上で約20万人を前に演説し、10年ぶりの軍事パレードを閲兵した。孫文が好んだ黒い礼服姿は、毛、トウ(登におおざと)小平、江沢民の各氏に続く、共産党第4世代の指導者としての自負を見せつけた。
パレードでは、米国全土を射程に収めるとされる大陸間弾道ミサイル「東風31A」や、ロシアの戦闘機をもとにした「殲(せん)11」など国産の最新兵器を多数披露し、軍事力の充実を誇示した。
無謀な増産計画で数千万人ともいわれる犠牲者を出した大躍進や、それに続く文化大革命など幾多の混乱を経て、中国は約30年前に改革開放にかじを切った。
そして今、日本を抜いて世界第2の経済大国になる日は近い。同時不況からも、大胆な経済対策で真っ先に回復しつつある。富国強兵の道をまっしぐらに突き進もうとしているようだ。
世界は米国の一極支配から多極化への歩みを速めている。存在感を高める中国経済に、米国も日本も欧州も緊密に結びついている。
半面、軍事力の強大化に世界は懸念と危惧(きぐ)を深めている。日本にとっても重い現実である。強引な資源獲得戦略が各地であつれきも呼んでいる。
一方で中国は、大国の責任を果たそうという意欲も見せる。
胡主席は、一連の国連の会議やG20の場で「気候変動への対応を発展計画に組み入れ、強力な措置をとる」「核軍備競争に加わらず、国際的な核軍縮プロセス推進に努める」などと述べ、国際協調を重視する姿勢を示した。
しかし、外の世界への自信に満ちた振る舞いと、国内の不穏な空気との落差は尋常ではない。
経済成長に伴う利権をめぐり、党員による権力の乱用や腐敗が絶えない。賃金不払いや土地収用をめぐる紛争が頻発しているが、司法や行政は十分に機能しない。国民の不満は、各地で当局との衝突を生んでいる。
新疆ウイグル自治区やチベット自治区では、民族紛争が収まりそうもない。テロへの警戒だとして、当局の締め付けは強まるばかりだ。
穏やかならぬ状況で迎えた建国記念日である。当局は祝賀行事から一般市民を締め出し、会場周辺のビルやホテルも立ち入りが厳しく制限された。厳戒のなかでの祝賀は、中国社会の深まる矛盾を映し出している。
中国が内外に示すべきなのは法治であり、人々が大切にされる調和のとれた社会である。その方向への脱皮の努力があってこそ、東アジア共同体の夢をともに語れる国になるに違いない。
核兵器開発の疑惑が持たれているイランと、国連安全保障理事会の常任理事国にドイツを加えた6カ国との協議が1年2カ月ぶりに再開された。
この間、事態は深刻さの度合いを増した。安保理が制裁決議を重ねてウラン濃縮の中止を求めてきたナタンズにある施設に加え、新たに第2のウラン濃縮施設の建設が発覚したからだ。
イランは施設の存在を認め、国際原子力機関(IAEA)に書簡を送ってその事実を伝えた。イラン側は国際ルールにのっとって報告したと主張しているが、これは通用しない。
ナタンズをめぐる核開発の疑惑がまったく晴れていないのに、第2の濃縮施設をつくっていたとは、国際社会への挑戦としかいいようがない。まだ稼働段階には至っていないとされるが、国連の潘基文事務総長が「安保理決議に違反するものだ」と厳しく批判したのは当然である。
イランとの対話路線を掲げるオバマ氏の米大統領就任で、核問題にも展望が開かれるのではないかという期待が生まれていた。これに真っ向から冷や水を浴びせる行動だ。
こうした行為がまかり通れば、日本の身近な脅威である北朝鮮の核を放棄させることもより難しくなりかねないし、世界の核不拡散体制が揺らぐ。
イランにもむろん、核を平和利用する権利はある。だが、それは核不拡散条約(NPT)の義務を誠実に果たし、国際社会の信頼を得たうえでの話だ。数次の安保理決議を無視しつづける現状で、認めるわけにはいかない。
オバマ大統領には強い主導性を発揮してもらいたい。直接対話を拒んできたブッシュ前政権の路線を改め、話し合いによる解決を探るという大統領の姿勢を評価する。同時に、イランの対応次第では、安保理の追加制裁も排除すべきではないだろう。
これまでイラン寄りだったロシアのメドベージェフ大統領も、米国と歩調を合わせる構えを見せている。
イランは不毛な対決路線から決別しなければならない。ウラン濃縮の停止と引き換えに産業用の核関連技術を提供するという米欧の打開案は、イラン側にも利益となる。受け入れて堂々と平和利用を進めたらどうか。
イランやアラブ諸国の間では、米欧が「イスラエルの核」を黙認していることへの不信感が強い。「核なき世界」の理念を語るオバマ大統領は、当面のイラン説得とともにイスラエルの問題とも向き合う必要がある。
事態の打開は容易ではなかろう。
日本は安保理で、対イラン制裁委員会の議長をつとめる。将来の中東非核化につなげるためにも、イランの妥協を働きかけるべきだ。それが、国連で核廃絶への強い決意を語った鳩山由紀夫首相の役割でもある。