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天声人語

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2009年10月1日(木)付

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 中国では里帰りを探親(タンチン)というそうだ。字面は親族を頼って帰る風だが、財をなした華僑は頼られる側だった。東京出身の作家・譚●美(たん・ろみ、「ろ」は「王へんに路」)さんが、北京生まれの早大教授劉傑(りゅう・けつ)さんとの共著『新華僑 老華僑』(文春新書)で昔話を紹介している▼70年代後半に里帰りした在日華僑氏。三日三晩の宴会で歓待されたはいいが、費用のほか電気や下水道の工事までせがまれ、400万円が消えた。それでも母国を支える喜びがあったという。愛国華僑は対中投資の懸け橋となる▼中国は本日、建国60周年を迎えた。歩みを色分けすれば、解放と混乱、続いて開放と成長となろうか。譚さんの知人が故郷で散財した頃から、一人当たりの国内総生産は約15倍に増えた▼あの日、毛沢東は整髪して天安門の楼閣に現れ、広場の数十万人を前に中華人民共和国の成立を宣言した。アヘン戦争以来の屈辱を越え、新中国の実験が始まった瞬間だ。毛は続けた。「我々は自らの文明と幸福を創造し、世界の平和と自由を促進するために働くだろう」▼豊かになった13億の民の間を今、格差と反目の溝が幾重にも走る。都市と農村、漢族と少数民族。一党独裁の下、人権や表現の自由にも光明は見えない。長い苦闘の末に建国を勝ち取った者たちは、明暗のまだら模様を天からどう見ていよう▼共産党の古里でもある農村から貧しい出稼ぎがあふれ、市場経済を巧(うま)く泳いだ富裕層、特権階級が海外旅行に興じる現実は本意ではあるまい。意あって技なしか、どちらも足りないのか。国造りの夢、道半ばである。

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