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9月30日付 編集手帳

 女優の田中絹代さんが67歳で亡くなるとき、脳(しゅ)(よう)のために両眼はほとんど失明していた。「目が見えなくても、やれる役がありますか」。遠縁にあたる映画監督の小林正樹氏に尋ねたと伝えられる◆その名を聞き、年配のファンは映画「伊豆の踊子」や「愛染かつら」のヒロインを、少し若い人はテレビドラマ「前略おふくろ様」の母親役や朝のテレビ小説「雲のじゅうたん」のナレーションを思い浮かべただろう◆日本映画の黄金期を生き、息をひきとるまで「女優」でありつづけた人の、今年は生誕100年にあたる◆記念の上映会が10月6日から東京国立近代美術館フィルムセンター(東京・京橋)で始まる。無声映画から晩年にベルリン映画祭で女優賞を受けた「サンダカン八番娼館 望郷」まで約90本、その数にも映画史に刻まれた偉大な足跡がしのばれよう◆鎌倉市の円覚寺にお墓がある。すぐそばにオウム事件の被害者、坂本弁護士一家が眠っている。一家の墓参をした折に手を合わせたことがある。石に故人の肖像が彫られてあった。わたしは永遠に女優――と、声の聞こえてきそうな像である。

2009年9月30日01時08分  読売新聞)
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