HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Tue, 29 Sep 2009 21:18:11 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:円高株安 藤井発言は『正しい』が:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

円高株安 藤井発言は『正しい』が

2009年9月29日

 円高株安が加速している。世界経済の不均衡是正に取り組む各国の意思表明に加えて、藤井裕久財務相の円高容認発言も引き金になった。正しい認識であっても、波乱要因になっては逆効果だ。

 二十八日の東京外国為替市場では一時、一ドル=八八円台という約八カ月ぶりの円高水準になった。株式市場でも輸出企業の採算悪化やデフレ加速の懸念が高まり、平均株価が一時、一万円の大台を割り込んだ。

 円高が進んだ背景には、先週の二十カ国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)がある。巨額の経常赤字を抱えた米国が不均衡是正を提案し、各国も合意した。

 ドル安は米国の経常赤字縮小を促す。そこから「米国は表向き強いドルを唱えていても、実はドル安容認ではないか」と憶測を呼んでいる。景気の先行きが不透明で、当面は米国の金融緩和が続く見通しであることも一因だ。

 日本側に目を向けると、藤井財務相はかねて「円高容認」と受け取られる発言を繰り返している。「人為的な為替安政策はおかしい」「(円高)トレンドは異常ではない」といった発言だ。

 為替相場は市場で決まる。小さな一市場参加者にすぎない通貨当局が介入で為替水準を中長期的に誘導できない現実を踏まえれば、藤井大臣の基本的認識は正しい。日本のデフレ傾向や米国経済の不透明感からも円高になる。

 だからといって、政策責任者が不介入方針を明示的に話していいかどうかは別問題だ。当局がドル買い介入しないとみれば、市場は安心して一層ドル売りに走る。ドルが急落したとき、政策対応の手を縛る結果にもなりかねない。

 当局の為替介入には「できないことをできるような顔をして実行する」という皮肉な側面がある。市場との駆け引きも重要だ。政治家としての藤井大臣の率直さは高く評価するが、ここは少しずるく慎重になってはどうか。

 円高ドル安は市場が不均衡是正に取り組む各国の意思を試している側面もある。実効性のある政策を打ち出さないと、ドル安が一段と加速しかねない。

 ただ冷静に考えれば、円高は日本経済にとってマイナスばかりではない。自動車など輸出製造業には収益悪化要因になるが、対外購買力を増して、原油や輸入ブランド品などは安上がりになる。ここは円高を前向きに受け止めて、生産性の向上につなげるような政策展開や経営努力を望む。

 

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