鳩山内閣が天下りの根絶に動きだした。高級官僚の天下りが後を絶たないことに、国民の怒りは頂点に達している。その根絶は「脱官僚依存」を示す好例でもある。不退転の決意で取り組め。
鳩山由紀夫首相は閣議で、天下り根絶の理由を「国民の厳しい批判に応え、行政の無駄をなくす観点から」と説明した。
官僚が天下りや、「渡り」と呼ばれるその繰り返しで、高額の報酬や退職金を受け取り続けることに憤りを感じる国民は多い。
中央省庁が所管する独立行政法人などへの天下りは、高額な随意契約にもつながり、「税金の無駄遣い」の温床になってきたことは疑いの余地がない。
天下りの根絶は、民主党がマニフェストに掲げた国民との約束の一つだ。首相が早速、実現への第一歩を記したことを評価したい。
天下り根絶に向けた対応方針によると、麻生前政権下で内定した独立行政法人の役員人事は事実上取り消し、今後三カ月かけて公募で決めるという。官僚OBの応募も容認しており、結果的に「天下り的」になる場合も否定できないが、手続きを透明化することで癒着批判は回避できるだろう。
問題は、鳩山新政権発足直前に、天下りが相次いだことだ。
汚染米不正転売事件で昨年九月に更迭された農林水産省の白須敏朗前事務次官は二日付で、同省所管の社団法人「大日本水産会」会長に就任。厚生労働省出身の柴田雅人前内閣府審議官は八月二十九日付で同省所管の社団法人「国民健康保険中央会」理事長に就いた。
これ以外にも、同様の天下りが多く見られた。根絶を掲げる新政権誕生直前の「駆け込み」を狙ったものだとしたら許し難い。
駆け込み天下りについても、さかのぼってやめさせたいというのが、国民の率直な思いだろう。
首相は「公務員が天下りをしなくても、定年まで勤務できる環境を整備する」と、天下りを前提とした早期退職勧奨をやめる方針も明らかにした。
定年まで省庁にとどまる職員が増えれば人件費はかさむ。それをどう抑えるのか。一定年齢以上の職員の給与引き下げなど、本格的な公務員制度改革への取り組みも重要になる。
天下り規制は、自民党政権時代にも何度か試みられたが、成し得なかった難題だ。それを根絶できるか否かは、鳩山内閣の力量を判断する試金石となる。
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