政治家には珍しく趣味はサイクリング。参加したロードレースでは好タイムで完走している。自民党の新総裁になった谷垣禎一元財務相は、協調性があり、家庭的で優しいが、恋愛に積極的でない「草食男子」がそのまま大人になったイメージの人だ▼政治家になる気はなく司法試験に合格して弁護士になったが、元文相の父の急死を受け、地盤を受け継いだ典型的な世襲議員。祖父は日中戦争中、南京に汪兆銘政権を擁立した「梅機関」の中心人物である影佐禎昭・陸軍中将である▼ポスト小泉候補だった「麻垣康三」のうち、安倍晋三、福田康夫の両元首相は任期途中で政権を放り出し、麻生太郎前首相は自らの失言もあり歴史的な大敗に導いた。しんがりに登場した谷垣氏が出馬時に誓ったのは、「捨て石になる」という悲愴(ひそう)感が漂う言葉だった▼党再生への道のりは厳しいが、自民党が立ち直らなければ、政権交代を前提とした二大政党制が絵に描いた餅(もち)になってしまう▼二〇〇〇年の「加藤の乱」で、「あんたが大将なんだから、行っちゃ駄目だ」と内閣不信任案に賛成しようとする加藤紘一元幹事長を涙ながらに慰留した姿が記憶に残る▼今後は自身が「総大将」として党を率いる。意外性こそないが、政治家としては珍しい「草食系」は、不毛な権力闘争を見てきた国民の目には案外、新鮮に映るかもしれない。