歴史的な衆院選からきょうで1カ月になる。政治の風景は変わった。楽屋話と思われるかもしれないが、政権と各メディアとの位置も変わった。鳩山政権が発足直後に打ち出した事務次官による記者会見の廃止に対する反応が興味深い。
▼1紙を除き、すべての全国紙が「知る権利」を侵すと批判する社説を掲げた。社説で扱わなかった新聞は、自民党政権時代には政府に最も厳しい論調で知られていた。結局、会見は廃止された。政権側は次官が匿名で語る「懇談」の方は禁じないらしい。顔をさらして語る会見に比べ、次官に対する監視は弱まる。
▼密室の懇談では民主党が恐れた官僚による世論誘導が逆に容易になる。それでも政府は会見廃止という「形式」をとり、メディア側は取材機会という「実質」をとる。だが、形式重視の政権らしくない光景も見た。岡田克也外相とキャンベル米国務次官補の会談だ。国務次官補は日本でいえば外務省の局長である。
▼形式は格上の外相への表敬訪問のはずだが、岡田・キャンベル会談は、双方が部下を率いてテーブルを挟んだ。外相と次官補が「対等」に見え、外相会談と錯覚させた。「日米イコールパートナーシップ」を確認したのは1960年代。今また日米の「対等」を語る鳩山政権の屈折した対米観が透ける設(しつら)えだった。