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天声人語

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2009年9月29日(火)付

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 俳人黛(まゆずみ)まどかさんを世に出した初句集「B面の夏」の題は、〈旅終へてよりB面の夏休(なつやすみ)〉による。家族旅行の後、宿題だけが残った少女時代の思いを詠んだ作という。楽しんだ残余を言い得て妙のB面。なるほど、くすんだ語感である▼若い方には説明が要るかもしれない。80年代に音楽CDが普及するまで、曲は円盤の両面に刻まれた。表裏に1曲ずつのシングル盤は普通、ヒットを狙うのはA面で、B面の多くは添え物に近かった▼地味に終わった自民党の総裁選に、この言葉を懐かしく思い出した。民主党が奏でる青臭いA面は海の向こうからも聞こえたのに、裏の三重唱は聴衆まばら。5割に満たぬ党員投票率は正直だ。野党の悲哀であろう▼首相の花が咲かない木に登った谷垣禎一氏は、ベテランの中では善人風ながら、党が出直したという新鮮味は薄い。B面に針を落としてみたら、どこかで聴いたメロディーだった印象だ▼とはいえ日本の政治にとって、この先数年ほど重い時はない。政権の未熟を突き、対案をぶつけるのが自民党の役割となる。反省すべきはし、与党に戻したくなるような成果を重ねるしかない。自党の盛衰のみならず、実りある競合に持ち込めるかどうかも谷垣氏次第である。再生の音を待ちたい▼A面ほど大衆受けを狙わないためか、時に斬新、そして聴くほどにしみる秀作がB面には潜む。千昌夫さんの「星影のワルツ」、加藤登紀子さんが歌った「知床旅情」、ガロの「学生街の喫茶店」。盤の裏側から歌謡史に名を刻んだ曲は少なくない。

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