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社説2 離陸できるか次世代PHS(9/28)

 PHS大手のウィルコムが事業再生ADR(裁判外紛争解決)による経営再建に乗り出した。携帯通信市場の競争激化により、資金繰りが難しくなったためという。同社は10月から次世代PHSサービスも始める。公共の電波を預かる事業だけに入念な将来戦略を描く必要がある。

 事業再生ADRは第三者機関を調整役に立て、金融機関などと再建計画をまとめるもので、私的整理のひとつとされる。ウィルコムは約1千億円の長期借入金の借り換えを巡り金融機関との協議が難航していたが、ADR手続きが認められたことで事業を継続できることになった。

 課題は「XGP」と名付けた次世代PHSを無事軌道に乗せられるかどうかだ。送受信ともに毎秒20メガ(メガは100万)ビットという高速通信が売りものだが、設備投資に5年間で約1400億円かかる。競合企業も異なる高速無線サービスを投入しており、財務の戦略性が問われる。

 姿勢が注目されるのは出資会社も同じだ。ウィルコムはKDDIの子会社だったが、米投資ファンドのカーライル・グループが60%を握る筆頭株主となっている。上場を目的に株式を取得したが、通信市場や金融市場の急変により、シナリオに大きな狂いが生じている。

 カーライルはウィルコムの経営首脳を交代するなど立て直しに躍起だが、社会インフラである通信はもともと息の長い事業だ。短期的な利益で小手先の経営改革を行えば混乱のもとにもなりかねないだろう。

 総務省にも監督責任がある。PHSは日本発の技術で、携帯電話より人体への影響が小さいため病院などで広く利用されている。総務省は競争促進と国産技術振興の観点からウィルコムに新事業の免許を与えたが、肝心のサービスが離陸しなければ電波の無駄遣いになりかねない。

 ウィルコムは約450万人の加入者を抱え、PHS事業だけを見れば黒字を維持している。だが新事業を軌道に乗せなければ企業としての発展はない。同社の存続が目的となっては本末転倒だが、通信というインフラ事業を手掛ける以上、利用者に迷惑をかけてはならない。経営陣はもちろん、出資企業や金融機関もそれを念頭に打開策を講じてほしい。

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