HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 26 Sep 2009 22:17:36 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:過去が未来の海図なら、きょうでちょうど五十年になる伊勢湾台…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年9月26日

 過去が未来の海図なら、きょうでちょうど五十年になる伊勢湾台風からは、読み取るべきことが、多い▼東海地方を中心に、五千人以上もの犠牲者が出た。記録に残る限り、わが国最悪の台風災害だ。高潮が重なるなど種々の要因がからんだ結果の悲劇だが、教えの一つは、避難の重要性である▼早々に住民を避難させて犠牲者ゼロだった自治体もある一方、それができなかった名古屋市の南部などでは多数の死者が出た。驚くような推計も昨年、示された。中央防災会議の専門調査会の報告書によると、適切な避難情報が出されていれば、愛知、三重両県で四千三百人近くに達した犠牲者数は実に、二十分の一にできた可能性があるという▼だが、危機が必ずしも明白でない時点で、避難措置に踏み切るのは容易ではないと想像する。そんな時、人は「まさか、そこまでのことは起こるまい」と考えがちだ。災害心理学で「正常化の偏見」と呼ぶ心理である▼さらに、時間や手間やお金といったコストもかかる。騒いだはいいが、何も被害がなかったら、と考えてしまうのが人情だ。ことによると、臆病(おくびょう)者のそしりを受けるかもしれない。だが、それで役所が躊躇(ちゅうちょ)してしまえば…▼日本航空草創期の社長、松尾静磨に有名な言葉がある。「臆病者といわれる勇気を持て」。大勢の命を預かっているのはパイロットだけではない。

 

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