HTTP/1.0 200 OK Age: 1 Accept-Ranges: bytes Date: Sat, 26 Sep 2009 20:21:24 GMT Content-Length: 7635 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.2 Last-Modified: Fri, 25 Sep 2009 14:50:39 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

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春秋(9/26)

 朝鮮半島から遠く離れたインドネシアの島で今夏から、ハングルが使われ始めた。少数民族チアチア族がハングルを表記文字に採用した。アルファベットより忠実に自らの言語を表記できるのだという。チアチア族には独自文字がない。

▼ハングルは李朝時代の15世紀半ば、第4代の世宗大王が制定した。当時は漢字表記だったが、庶民も楽に学べるよう作った表音文字だ。朝鮮半島には数多くの侵略を受けた歴史がある。独自の文字導入は民族の誇りや自立心を高める意図もあった。戦争、民族、言語。ハングルの輸出は重い歴史の一幕にすぎない。

▼日本でも戦後、日本語をローマ字や仮名文字にする案があったという。米教育使節団の勧告だ。いわく。難しい漢字を庶民が読めるはずはない。事実を知らないから死にもの狂いで戦う。漢字なる悪魔の文字は全廃を。敗戦は「言語上にも大きな変化をもたらす」と、故大野晋氏が「日本語の教室」で書いている。

▼どうやら救われた日本語だが、「日本語が亡(ほろ)びるとき」(水村美苗)を読めば、いま新たな危機にある。この本の副題は「英語の世紀の中で」。水村氏が命名した「普遍語」である英語に目を背けるわけにもいかない。鳩山由紀夫首相の国連での英語演説は、決して流ちょうではなかったが、まじめさが伝わった。

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