HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Last-Modified: Sat, 26 Sep 2009 17:13:31 GMT ETag: "5b11a8-5343-2f0e24c0" Content-Type: text/html Cache-Control: max-age=5 Expires: Sun, 27 Sep 2009 03:21:07 GMT Date: Sun, 27 Sep 2009 03:21:02 GMT Content-Length: 21315 Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
現在位置:
  1. asahi.com
  2. 社説

社説

アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)

G20サミット―危機抑止の次元を超えよ

 世界経済危機の深手を癒やし、再発を防ぐための国際協調をどう強化するか。米ピッツバーグのG20サミットに集まった首脳らは、将来に向けた課題を確認し合った。

 首脳声明は財政・金融政策の総動員を解除する「出口戦略」を急がず、景気刺激策を継続するとうたった。世界経済は急激な収縮に歯止めがかかったものの、生産や雇用、消費は低迷したままだ。刺激策の堅持も重要な合意点だといえよう。

 景気が再び失速したり、失業増加に伴ってデフレが深刻化したりする懸念もある以上、状況に応じて追加策の検討も怠るべきではない。

 金融機関に対する規制強化に合意したことも、有意義な前進だ。

 そのひとつが自己資本規制の強化である。ただし、金融機関に対する政府の監督が不十分では効果が出ない。金融機関の活動内容や実際の資金力などを的確に把握する態勢を各国が協力して築き上げることが、グローバルなバブル発生・崩壊と危機の連鎖を防ぐために重要な課題となる。

 首脳らは、金融機関の経営者や幹部の高額報酬に対する規制にも合意した。巨額ボーナスに目がくらみ、危険な取引にのめり込むような仕組みを放置してはならない。この規制はきちんと具体化することが必要だ。

 こうした規制を考えるうえで肝心なのは、いざとなったら税金で救済せざるを得ない巨大金融機関を各国政府や国際機関が監督する仕組みをいかに築くか、ということだ。グローバル化した資本主義を納税者の民主主義が制御するルールをどう作れるのか、という重いテーマでもある。

 経済の「グローバルな不均衡の是正」への取り組みも合意された。世界経済は、米国が過剰な消費を輸入でまかなうことで回ってきた。この構造を是正するため、中国や日本などが内需を拡大し、貯蓄と投資の均衡を図るという方向は妥当だ。

 世界危機の克服や再発防止はもちろん、世界経済の持続可能な成長と人々の生活の安定・向上につながるという点で、きわめて大切である。

 日本では、少子高齢化の進行に比べて貧弱なままの医療・福祉関連産業をどう育てるか。中国でも、個人消費の拡大に欠かせない社会保障などの安全網整備をどう進めるか。G20合意がこうした課題の解決に向けて首脳たちの背中を押す効果を期待したい。

 G20の協調は、グリーンな新産業と雇用をグローバルな規模で生み出す上でも有効だ。貧困問題や地球環境問題の解決に生かしてほしい。

 そのためにも、新たな思想が必要になる。鳩山首相の「友愛」もひとつの手がかりとなりうる。具体化する知恵と努力が新政権に問われる。

JAL再生―「甘えの構造」を断ち切れ

 日本航空の経営再建策の抜本的見直しに新政権が動いた。前原誠司国土交通相が、新たに発足させた専門家チームに再建計画の検討を指示した。

 カネボウやダイエーの再建を担った旧産業再生機構の中心メンバーら事業再生のプロ集団だ。日航本社に入り1カ月で計画の大枠をまとめるという。

 日航の再建計画策定は、自公政権下で設けられた国土交通省の有識者会議との間で進められてきた。だが、前原国交相はこれを廃止。日航の西松遥社長から求められた500億円を超す公的資金注入による資本増強案も、前提となる計画の「実現可能性が不十分」として受け入れなかった。

 日航の現在の苦境の引き金を引いたのは、世界同時不況や新型インフルエンザの影響による国際線需要の激減だ。だが、経営がこれほどまでに悪化した根本要因は、何と言っても日航自身の赤字たれ流し体質にある。

 不採算路線の整理を阻んできた政治家や地方自治体とのしがらみ、国交省とのもたれ合い。八つある労組との関係も複雑だ。こうした政官業および社内の「甘えの構造」を断ち切らない限り、日航の再建はない。

 この構造の上に安住してきた日航経営陣と国交省の官僚に抜本策を期待することはできない。第三者チームが主導するのは妥当な選択だ。

 半官半民だった日航が完全民営化してから22年。内外の主要都市を結ぶ重要な公共交通の担い手としては安定した経営が求められる。だが、民間会社として自立しているはずの日航はいまだに政府の助けを求めている。

 これも日航が赤字経営を続けてきたせいである。日本政策投資銀行や民間金融機関から再三の緊急融資を受け、今年6月には政府保証をもとに1千億円の融資を受けた。

 それでも今後さらに1千億円以上の追加融資や資本支援が必要になるという。これでは穴のあいたバケツに水を注ぎ込んでいるようなものだ。

 専門家チームは日航に厳しいリストラ策を求めるだろう。経営を圧迫している人件費や退職者に対する年金債務を削り、不採算路線から大胆に撤退する道を避けて通ることはできまい。

 社員やOB、株主、債権者にはつらい負担となる。だが、日航を真に再生させるにはやむを得ないのではないか。公的資金の注入も考えるなら、なおさらのことだ。

 そうした方向での合意づくりが進まないなら、近く発足する企業再生支援機構や民事再生といった法的な枠組みを活用しなくてはなるまい。

 世界には航空会社に路線開設の自由を大幅に認めるオープンスカイ政策を採る国が増えた。日航問題を抱える日本は、流れから取り残されている。それゆえにも日航再建が急がれる。

PR情報