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天声人語

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2009年9月26日(土)付

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 開高健は、小説家が備えるべき資質をピアノ線に例えた。首を断つほどの強さと、ビンビン響く感性が共に欠かせないのだと。政治家の理想もピアノ線ではないか。張り詰めた信念を、聴衆の心に送り届けるという意味である▼そんなことを考えながら、国連安全保障理事会の首脳演説を聴いた。全会一致で決議した「核なき世界」。議長を務めたオバマ米大統領の信念と思いたい。半年前に口にした針路へと各国を引き寄せる意志は、ピンと張った鋼の筋を思わせる▼かたや鳩山首相。英語の発音はこなれていても、原稿を追う表情はやや硬かった。それでも「被爆国の責任を果たすために核を持たない」「日本は核廃絶の先頭に立つ」のくだりは、万人の心に響いたはずだ▼会場の映像は、もどかしくもあった。丸く座った五つの常任理事国が自ら決断すれば、世の核弾頭の97%はなくせるのだから。オバマ氏のメッセージは、残る3%を蓄える国やテロ集団に向けたものでもある。心あるリーダーが同じ勇気と正気を保ち、非核の音色を膨らませるしかない▼被爆国に生まれながら、「核なき世界など平和ぼけの夢」と語る者がいる。核武装を唱えるに至っては、地道な外交努力に背を向けた逃げであろう。勇ましい言説に惑わない強さ、感性を備えたい▼オノ・ヨーコさんに深い言葉がある。〈ひとりで見る夢は夢でしかないが、一緒に見る夢は現実だ〉。ならば人類共通の願いがかなわぬ道理はない。こと核廃絶については、いい意味で青臭く、突っ張るハトであれと願う。

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