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安保理核会合―首脳たちは決意を行動に

 議長をつとめたのは「核のない世界」を主唱するオバマ米大統領だった。国連安全保障理事会が初めて、核軍縮・不拡散を主題にした首脳会合を開き、核廃絶をめざす決議を全会一致で採択した。

 決議は、核保有国の軍縮、包括的核実験禁止条約の発効、兵器用核分裂物質の生産禁止条約の交渉開始を促したほか、北朝鮮とイランへの制裁決議も再確認した。強制力はないが、核廃絶という目標に向けて「核の危険を減らしていく行動の枠組み」(オバマ大統領)となる決議である。

 安保理で拒否権を持つ5常任理事国は、いずれも核保有国だ。その5カ国すべての首脳が出席し、核廃絶への行動を約束した。プラハ演説から半年もたたないうちに「核のない世界」を国際社会の重要課題に押し上げたオバマ大統領の強い決意を感じさせる。

 鳩山首相も応じた。「核兵器開発の潜在能力がある」のに、日本が非核の道を選んだのは、核軍拡の連鎖を断ち切ることが、唯一の被爆国である日本が果たすべき「道義的な責任」と信じたからだと明言した。非核三原則の堅持も表明した。首相自ら非核日本の立場を世界に明確にしたことは、今後の日本外交の大きな力になるだろう。

 プラハ演説でオバマ大統領は、核兵器を使用した唯一の核保有国として行動する「道義的責任」があると宣言した。被爆国と核使用国という日米の首脳が、そろって核廃絶への「道義的責任」を表明したのは偶然ではない。核の非人道性を体験した日本と、核の威力・脅威を熟知する米国は今や、同盟関係を生かしてともに核廃絶を目指すべき立場にあるからだ。

 たとえば、米国が戦略を見直し、核の役割を減らしていくことを、日本は積極的に支持すべきだ。米国が核を減らすと抑止力が弱まり、日本の安全保障に差し障るとの意見もある。確かに米国の抑止力は大事だが、核の危険を減らしていくことも、日本にも国際社会にも緊急の課題だ。

 世界の核の9割以上を保有する米ロがまず大幅に削減すべきなのは間違いない。ただ、それが済むまで他の保有国が座視するのでは困る。

 中国の胡錦濤国家主席は安保理会合で、核保有国は非核国と非核地帯に対して核使用や核による威嚇を行わないことを明確に約束し、法的拘束力のある合意にすべきだとの考えを示した。核保有国間で核先制不使用条約を締結すべきである、とも語った。

 信頼できる形でこれらが実現されれば、核の危機を減らせるし、日本の安全保障にも役立つ。今回の安保理決議に基づき、中国は言葉を行動に移していく責任がある。そのために日米がどのような協力を進めていくべきかも、考えていきたい。

事故調の情報―まさかJR西に渡すとは

 耳を疑うような事実が前原誠司国土交通相によって明らかにされた。

 05年のJR宝塚線(福知山線)脱線事故の原因究明にあたっていた国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現在の運輸安全委員会)の委員の一人が、最終報告書を公表する前に、その内容を最大の当事者であるJR西日本の山崎正夫前社長に伝えていた。

 漏らした元委員の山口浩一氏は、山崎氏の旧国鉄時代の先輩にあたる。報告書づくりの最中に山崎氏の求めで何度も会っていた。調査状況などを教えただけでなく、報告書案の一部のコピーまで渡したという。

 委員は職務で知った秘密を漏らしてはならない、と法律が定めている。今回はそれを、よりにもよって調べられる側に漏らしたのだから悪質だ。委員会の中立性を揺るがし、報告書全体の信頼性まで大きく損なってしまった。

 山崎氏の責任も、むろん大きい。当時、事故の背景や原因として、JR西日本の日勤教育や余裕のないダイヤ、現場付近に新型の自動列車停止装置(ATS)が整備されていなかったことが指摘されていた。これらについて、事故調がどんな議論をしているかを聞き出そうとしたという。

 それだけではない。新型ATSが整備されていれば事故は防げたとする報告書案の記述について、削除や修正まで山口氏に求めたという。ATSは、事故原因を見定めるうえで大きな論点になっていた。のちに神戸地検が山崎氏を業務上過失致死傷罪で在宅起訴する際にも、この点が吟味された。結果として報告書には反映されなかったとしているが、事故調査が大きくゆがめられる恐れがあったことになる。

 調査のために公式に会うのならともかく、私的な場で2人だけで食事をしたというのは、「軽率で不適切な行為」(山崎氏)ではすまされない。JR西日本と自身の防衛のために不明朗な行動をしたと受け取られても、しかたないだろう。

 犠牲者の遺族からは、山崎氏に対し「背信行為だ」と怒りの声が上がっている。山崎氏が社長退任後も取締役を務めているのは、遺族への対応を担い、安全への取り組みを進めるためだった。しかし、これでは職責を果たす資格はあるまい。

 この不祥事を受けて、事故調から組織替えをした運輸安全委員会は、委員が事故を起こした側の人と個別に会わない、調査の相手と密接な関係にある委員を調査に参加させない、といったルールをつくる方針だ。そのルールを厳格に守らせるしくみも整える必要があろう。

 今回の事実が公表に至ったのは、政権交代とかかわりがあるのだろうか。同じような事実は、ほかの省庁にも眠っているかもしれない。

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