HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 57903 Content-Type: text/html ETag: "ad66a-1623-2aaf0d00" Expires: Fri, 25 Sep 2009 01:21:09 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 25 Sep 2009 01:21:09 GMT Connection: close 借金返済猶予 金融に国が介入する状況か : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



現在位置は
です

本文です

借金返済猶予 金融に国が介入する状況か(9月25日付・読売社説)

 中小企業への貸し渋り対策は必要だが、一律に借金返済を猶予するとすれば行き過ぎだろう。

 亀井金融相が打ち出した、返済猶予制度(モラトリアム)構想のことである。

 「貸し渋り」にあった中小企業や、住宅ローンに苦しむ個人などの救済を狙いに、借金返済を3年程度、猶予する方向のようだ。

 24日には、金融庁の政務三役会議で、法案化のため具体的な内容を詰めるよう指示した。

 実現すれば、金策から解放される中小企業や個人は、大助かりだろう。だが、借りたお金を返さなくていいと国がお墨付きを与えるような制度には問題がある。

 お金の貸し借りに国が介入して契約を変更させることは、自由経済では禁じ手だ。これでは、金融機関が安心して取引できなくなる。亀井金融相は、構想を撤回すべきであろう。

 今回の構想は、中小・零細企業の返済について「最長3年間の支払い猶予制度を新設する」とした国民新党の政権公約がもとだ。

 だが、連立3党の政権合意には明確な形では入らなかった。藤井財務相が導入に疑問を示すなど、与党内には異論がある。

 戦前の日本では、関東大震災と昭和初期の金融恐慌の際にモラトリアムが実施された。金融機関の破綻(はたん)防止などに一定の効果はあったとされるが、当時と今では危機の度合いがまったく違う。

 米国発の金融危機に始まった深刻な不況から日本経済が脱しつつある中、本当に必要なことか。

 中小企業向けの融資は、金融機関の融資全体の7割にあたる300兆円に近い。

 仮にモラトリアムが実施され、巨額の返済が長期間止まれば、銀行の業績は悪化し、融資の余力は低下しよう。新規融資に回せる資金も不足する。

 そうなれば、金融機関は中小企業に対する融資に消極的になり、企業金融がかえって逼迫(ひっぱく)する可能性が高い。

 ただし、今なお多くの中小企業が資金繰りに行き詰まって倒産していく現実もある。倒産防止のための信用保証制度や政府系金融機関による融資の拡充などを図る必要はあろう。

 それでも不十分なら、金融機関に企業の再建見込みなどを慎重に審査させた上で、返済条件の緩和を求めるといった手もある。

 鳩山内閣に必要なのは、モラトリアムではなく、中小企業などに対する実効性のある金融支援策を打ち出すことだ。

2009年9月25日01時17分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
現在位置は
です