人の印象はどう決まるか。無論、単純ではないが、米国の心理学者S・E・アッシュが、一九四〇年代の実験で明らかにしたことは、俗言とも合致する気がする▼彼は、「知的な」「冷たい」といった、人の性格に関するいくつかの言葉を被験者に示し、全体の印象を問うた。その結果、同じ言葉を並べても、最初に前向きな言葉を示した時の方が、後ろ向きの言葉を示した時より、全体の印象は前向きになったのだという(山岸俊男編『社会心理学キーワード』)▼その道では「初頭性効果」と呼ばれるが「第一印象が肝心」とは世間でも言うこと。ルーキー首脳として米国で外交デビューを飾った鳩山さんも意識したのだろう。オバマさんとの初会談でも「前向き」な印象を与えることを優先した様子▼自衛隊の給油問題や在日米軍再編問題などは持ち出さなかった。厄介なことは後回しにしたとも言えるが、まずは信頼関係をという戦略らしい。うまく「初頭性効果」が働くよう願う▼外交で首脳同士の個人的関係が重要なのは間違いない。鳩山さんは各国、特に近隣国首脳とは意識して頻繁に会う機会を設けるべきだ。接触頻度が高いほど好意を持ちやすいのは、これまた心理学の実験で確かめられている▼「熟知性効果」などと、難しく言う必要もあるまい。同じ学校や職場で生まれるカップルのいかに多いことか。