経営再建中の日本航空(JAL)の西松遥社長は前原誠司国土交通相に呼ばれた席で、公的資金を裏付けとした資本増強を要請した。だが、政府頼みでJALが本当に再生するのだろうか。政府が出口の見えない安易な公的救済に踏み切れば、国民負担が際限なく膨らむ恐れもあり、反対せざるを得ない。
JALの経営不振の引き金は昨秋以降の世界経済の失速だが、高コスト体質や不安定な労使関係といった同社固有の問題も大きく経営の足を引っ張っている。こうした構造問題にメスを入れない限り、公的支援で資金繰りに一息ついたとしても危機は繰り返す可能性が高いだろう。
JALの求める公的資金を利用した資本増強は産業活力再生法に基づく措置だが、この制度は金融市場の変調などで一時的に自己資本が減少した企業を念頭に置いたものだ。構造的な問題を抱え、金融危機以前から慢性的な低収益に悩んできたJALを適用対象にすべきではない。
JALがめざすべきは、やはり自主再建である。人員削減、年金制度の見直しや不採算路線の整理は不可避だ。路線廃止の対象地域では反発も強まっているが、一民間企業のJALに採算度外視で路線を維持せよと求めるのは無理がある。
ぎりぎりの経営努力をしたうえで、なお資金調達がままならず、かつ債務超過の可能性が高いなら、法的整理が次の選択肢となる。そうなった場合、混乱を最小限に抑えるとともに「国民の足」を維持するためには事業の継続を前提にした再建型の法的整理が現実的な道である。
法的整理で債務などのリストラが加速すれば、それだけ再生の可能性は高まる。再生のためには一定の資金が必要で、米デルタ航空などがJALへの出資に意欲を示している。
高コスト体質などの構造問題を解決したうえでなら、政府が再建プロセスに時限的に関与することもやむを得ない。オバマ米政権が連邦破産法の適用を受けたゼネラル・モーターズなどに公的資金を注入した事例が参考になろう。
JAL不振の背景には、国際的に見て割高な空港着陸料などもある。前原国交相はこれらの問題を含め航空行政のあり方を見直すべきだ。