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春秋(9/25)

 その夜、台風の接近を知りながらも「私はのんきにレースを編んでいた」とある女子中学生は作文に書いている。ところが、ほどなく暴風雨はミシミシと家を揺さぶり、家族を濁流が襲う。「私はただ死という事だけが頭にひらめいた」

▼伊勢湾台風の惨禍からあすで50年を迎える。死者・行方不明者5098人。あの巨大災害は、こういう悲劇を東海地方のいたるところにもたらした。作文の少女の一家に限らず、ぎりぎりまで家にとどまっていたという証言が多い。もう少し早く避難ができていれば、犠牲者ははるかに少なく済んだはずだという。

▼「伊勢湾」の教訓は後の台風対策の原点になった。知恵を出し合い被害を大幅に減らしてきた台風列島だ。とはいえ、悪条件が重なれば当時と同じように高潮で大きな被害が出かねないという。温暖化による海面上昇に加え、堤防や水門が損壊したら……。そのときは首都圏が水没する、との恐ろしい予想もある。

▼半世紀前の災害ではあるけれど、今も学ぶべきことは山ほどあろう。まずはその恐怖を知るところから始めてもいい。たとえば伊勢湾台風50年事業実行委員会のホームページには、かの女生徒の作文も載っている。少女は父と姉を亡くし、遺体を土手で焼くというむごい体験もした。大昔の話というわけではない。

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